獅子が招いてくれた恋
ゴロン―――…
あたしは疲れ果てて床に寝転んだ。
「隙ありーっ!」
肩甲骨とお尻の辺りに手を添えられたと思うと、思いっきり転がされた。
こういう身体を張った悪戯はアサミの十八番。
「だがしかしっ!」
“だがしかし”、地味に流行ってる言葉。
『だがしかし?』
「ちかれたぁー」
アサミも床にゴロン、とした。
あぁ、今が夏だったらな。
更衣室の奥にあるシャワーで汗を流して、さっぱりして帰るんだろう。
でも、もう冬。
そんなことしたら風邪っぴきだ。
「ハルカー」
『んー?』
「あの子っち、上手いよね…」
『うーん。“E3、連覇危うし!”って感じだね』
あたしたちはごろごろしながら彼らを見物した。
長い髪をツインにしてる佐野ちゃん、セミロングで左目下の泣きぼくろがセクシーな山浦ちゃん。
ついでのユウヤとマサヒロ。
『元気だねえ』
「若いねえ」
余裕の表情でボールを追い掛ける4人。
良い汗は流したものの、げっそりした表情で床と仲良くする2人。
「ハルカー、ストレッチ!」
あたしはストレッチじゃない…
「腰痛いし足もだるいからマッサージも〜!」
『はいはい、15分100円ね』
あたしはいつも冗談でこう言う。
そして断らない。
『ヨイショッとお!』
器具庫からマット運動で使いそうなマットを引っ張り出して、アサミを寝かせた。
「いつものコースで…」
『終わったらあたしもよろしくっ』
こうしてストレッチやマッサージを施し合うのは、現役の頃ではいつものこと。
バスケ部の練習が終って、女子バレー部の練習が終わってない時は毎回お邪魔してた。
ていうより、引き込まれた。