獅子が招いてくれた恋
 
でも…、佐野ちゃんと山浦ちゃんはマッサージを覚えてどうするんだろ?


「あの…、リョウ先輩がしてって言うんです」

あ、部員にやってあげるのか〜。
でも、なんだかなあ。


『あたし、2年半部活してきて、誰にもしたことないよ?』


まず奴らはストレッチをしない。
ちょこっと体操をして、たまに深く筋を伸ばす程度だ。

それにダルイ時は駅前の電気屋でマッサージチェアに座る。
あたしもそれはよくやった。


『リョウかあ…』

リョウは2年の部員だ。


「はい、いつもハルカ先輩が帰ってからすぐにです」

『ふーん。気に入られちゃったんじゃない?』

毎日マッサージを頼まれるのは山浦ちゃんだけらしい。

たぶんリョウは“ほの字”。
惚れっぽいけどチャラくないし、男気がある方だ。


山浦ちゃんをからかおうとしたけど、次はあたしがからかわれた気分になった。


「ハルカ先輩は誰かにボタンとかあげたりするんですか?」

これだけの質問がなぜか恥ずかしかった。


『今のところは…』

「よかったらワイシャツ貰えませんか!?」

『いいよ、2枚ともあげる』

「あたしはポロシャツ貰えます?」

恥ずかしくも、寂しくもなった。
まだ先だけど、もう卒業なんだなーって。



「ハルカ先輩、1年の間で人気なんですよ!」

「よかった〜、先客が居ないうちに予約取れて」


あたしはモテ期かもしれない。

夏休みに1こ上の先輩に告られたり、教習所で軽いナンパもされた。
1学期には、2年の時に付き合ってたヘイスケに「やり直さないか」とも言われた。

ついには女の子にまで…
勝手に己惚れていた罰なのか、意外な言葉が聞こえた。


「悪いけど、ブレザーの第一ボタンは先客居るからね。2年前から」

マットを器具庫に片付けていたユウヤだ。


「「えぇ〜」」

「ユウヤ先輩、それ誰ですか!?」

「俺、」

自分を指差すユウヤ。


「「えぇえ〜〜!」」

なぜかテンションの上がる佐野ちゃんと山浦ちゃん。


「「えー!?」」

ただ驚くだけのアサミとマサヒロ。


ポカンとするあたし。




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