獅子が招いてくれた恋
店を出て、河野さんの愛車の助手席に座って好きな曲を選択した。
「君は俺の彼女か何か?」
なんて一度突っ込まれたことがある。
このHDDに入っている曲のほとんどが俺のリクエスト。
『あの曲好きです』
『このバンドのアルバムないんですか?』
河野さんが俺色に染まる…
気持ち悪いけど面白い。
今日も好きな曲を聴いている。
たぶん来週もこうして河野さんの車に乗るんだろう。
『そう言えば河野さん…最近あんまり誘ってくれませんね』
以前は週に2〜3回とかランニングに付き合わされて本当に大変だった。
それが今では週一だ。
「そうだね。寂しい?走りたい?」
明らかに“(笑)”が付いた。
「最近ねー、走り仲間ができてね」
はぁ〜。
そーゆーこと〜。
「彼、いい走りするんだよ」
そーなんすか〜
「学生でね、今は研究の発表資料作ってるんだって」
そーなんすか〜
「今度3人で走ろうか」
あ〜…
メールを打ちながら先輩の言葉をテキトーに聞き流す。
サイテーな俺。