獅子が招いてくれた恋
 
店を出て、河野さんの愛車の助手席に座って好きな曲を選択した。

「君は俺の彼女か何か?」

なんて一度突っ込まれたことがある。

このHDDに入っている曲のほとんどが俺のリクエスト。

『あの曲好きです』
『このバンドのアルバムないんですか?』
河野さんが俺色に染まる…
気持ち悪いけど面白い。




今日も好きな曲を聴いている。
たぶん来週もこうして河野さんの車に乗るんだろう。


『そう言えば河野さん…最近あんまり誘ってくれませんね』

以前は週に2〜3回とかランニングに付き合わされて本当に大変だった。
それが今では週一だ。


「そうだね。寂しい?走りたい?」

明らかに“(笑)”が付いた。


「最近ねー、走り仲間ができてね」

はぁ〜。
そーゆーこと〜。


「彼、いい走りするんだよ」

そーなんすか〜


「学生でね、今は研究の発表資料作ってるんだって」

そーなんすか〜


「今度3人で走ろうか」

あ〜…


メールを打ちながら先輩の言葉をテキトーに聞き流す。
サイテーな俺。




< 96 / 106 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop