僕の死に方
「堂島くんの、おかげなんだ」
 藤見正信が、今も友人を演じ続けている僕に語りかけてくる。
「堂島くんがあの時……覚えてるかな? あのリサイクルショップで、言ってくれた事」
 何度も頭の中で練習していた言葉だ。覚えていないはずが無い。
「……なんだっけ?」
 だけど、計画を台無しにされた僕は、しらばっくれることにした。
「僕は死ぬべきじゃない。死ぬべき人は他にいる、って」
「そんなこと、言ったかな」
「うん。……堂島くんの言う通り、僕は、自殺……を、考えてたんだ」
 そうだろうな、と思いながら、僕は黙って彼の言葉に耳を傾けた。
「堂島くんのおかげで、僕は自殺を思いとどまる事ができた。それで、考える時間も、手に入れることができたんだ」
 その言葉に、もしかしたら僕の考えを見透かされたのか、と邪推してしまう。
 だけど、続く藤見正信の言葉で、そうではないとすぐにわかった。
「学校にナイフを持っていくまでの間、ずっと考えてた。本当に僕は、彼らを殺すべきなのか。でも、僕はもう限界で、それしか考えられなかった。殺そうと、決心したんだ。……したはずだった」
 淡々と語る藤見正信の表情は、とても穏やかだった。
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