僕の死に方
 季節外れな厚めのコートに身を包み、深めの帽子とサングラスをつけた男性。
 普通なら、すぐに気付いて彼から離れようとするだろう。
 だけど考え事をしていた僕は、彼に気づくことさえ出来なかった。
 男性と目が合うまで、上の空で歩いていただけだ。

 だから僕は、遅すぎた。
 彼を怪しいと思うのも、彼から離れるのも、周りに誰もいないことに気付いたのも。

 そして僕のわき腹に、ナイフが突き立てられているのに気付くのも――
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