僕の死に方
「おい、ノロマ」
 教室の隅から、不快な声が聞こえてくる。
 当然、僕に対する言葉ではない。教室の隅に追い詰められ、数名の人間からあらぬ叱責を受けている男子生徒に対するものだ。
「な、なんですか……?」
 藤見正信。いつもおどおどしていて、はっきりとした語調で喋るのを見たことは、ほとんど無かった。
 そんな彼は、苛めを受ける対象としては、格好の的になってしまう。
 一度、クラスのリーダー格に目をつけられてからは、見るに耐えないような陰湿な苛めを受けるようになっていた。
 苛めている側は、決して教師などの目に触れるような方法は取らない。
 だけど、教師さえいなければ、他の生徒が見ていようと、構わず苛めを再開する。
 大半の生徒は、黙って眺めている、傍観者ばかりだからだ。
 今までは僕も、眺めているだけの一人だった。
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