約束の日
そして今、

そうした日頃の感謝を込めて

男は「これ」を書いている。

今日の夜9時までに、これをあの女に渡す。

2人で決めた約束。


時計に目をやると

残り30分を切ろうとしている。

あの女は待たされるのが嫌いだ。

焦りは激しくなるばかり。

しかし、ここだけは、この一文だけは

決して手を抜いてはならない。


傍らのメモ用紙に

思い付く限りの台詞を書いては消す。

インクの減りがいつにも増して早い。

刻一刻と

時は流れる。
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