クリスティアナ

過去

「……誰にも言わないで」



ドレスを整えているリリアにクリスの小さな声が聞こえた。



リリアはドレスから顔を上げてクリスを見た。



今聞いた言葉をもう一度繰り返し言ってもらいたくなった。



リリアの耳に聞こえたのは確かに女の子らしい言葉だった。



誰にも言うな……ではなく、誰にも言わないで。



無意識に言ったらしい。



クリスは不安げな瞳でリリアを見ていた。



「すぐに陛下にお伝えして何が起こったのか調べていただく……」



陛下の名前を出すと潤んだ青い瞳が揺れる。



「……そう思いますが、クリス様がそうおっしゃるのならわかりました」



「……ありがとう」



今日のクリスは大人しくされるままになっていた。



おかげでリリアは思う存分クリスを美しい姿に変身させることが出来た。



もともと美しい顔なのだが、ライトブルーと黒いライナーで目を更に大きく際立たせ、唇にはローズピンクの紅、頬にも濃すぎないようにピンクの頬紅を施した。



目の前に立っている美しい姿を見れば、一国の王女だと言われても素直に頷けるほどの気品があった。



「出来ましたわ　皆さん、驚かれますわね　特にキース様は」



わざとキースの名前を出してみたが、クリスは無表情だった。




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