クリスティアナ
クリスはワルテ山の麓まで来ていた。



慣れない馬でクリスの身体は痛みを訴えていた。



特に腿が痛み、馬を降りたらガクガクして立てないかもしれない。



馬は厩舎から盗んできた。



泥棒の罪で捕まるかもしれないな。



お礼も言わず、置手紙も残さずに出てきてしまった自分は恩知らずだ。



麓の小川の周辺には可愛らしい小屋の民家が数件ある。



小川で渇いた喉を潤していると、農民らしき老人が近づいてきたのを見て、クリスは外套の下で身構えた。



外套はキースの物で返していなかったのを見つけ、裾を破き着たのだ。



「そこの旅の方、これからどこへ行くんだい?」



農民で悪人には見えない。



「ワルテ山です」



女だとばれないように声を低くした。



外套を深くかぶっているので男だと思われるだろう。



「先日山賊の討伐が行われたところじゃないか」



「討伐?」




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