クリスティアナ
「離せ……っ……」


「怪我を治すことを考えろ!」


キースは怒鳴るとクリスを抱き上げた。



それでもなお腕の中で暴れるクリスに手こずるキースを見かねたガラムが側に近づく。


「おい!暴れるな――」


キースが言った時、ガラムが指を一本クリスの額に置いた。


そして呪文を口にするとクリスの瞼はゆっくり降りた。


ガラムが呪文で眠らせたのだ。


「困った娘さんですね よくここまで歩けたと感心しますよ」


ガラムが苦笑いを浮かべる。


クリスに興味を覚えたルーファスも部屋に付いてきた。


シェルトランドの最重要人物4人が部屋にいた。


「イレーヌ殿 お手伝い願いますか?陛下とキース殿は隣の部屋でお待ち下さい」


ガラムが言うと2人は寝室を出て行った。



キースの外套の下は下着しか身につけていなかった。


イレーヌは良くこの姿で出て行こうとしたものだと思う。


ガラムが腕の包帯を丁寧に外し始めた。


腕の傷はやはり開いており膿が混ざった血が流れている。


「イレーヌ殿、医務室から薬草と消毒薬を持ってくるようにどなたかに頼んできてください」


「はい」


イレーヌは言われたとおり部屋の外に立っている騎士に頼んだ。


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