左手のエース
「ふぁぁぁ…眠い…。」
まだ薄明るい朝、あたしはジョギング用のスニーカーを履き、イヤホンを耳につけて玄関をでる。
「よかった。雨やんでる。」
あたしは空模様を確認して走り出す。
昨日はあまり眠れなかった。
"リョウの右腕はほとんど動かねぇんだ。"
"もう一生治ることはないらしい"
大地から聞いた言葉が心に渦巻く。
あたしは東亮太と出会った日からのことを、1つ1つ思い返していた。
屋上で初めて会った時、
ボールを拾ってと頼むあたしに、
アイツは手が空いてないと言った。
「……確かに…
左手はタバコ握ってたよね…」
あたしの足取りは重い。
思い返せば思い返すほど、
アイツはいつも右手をポケットに入れていた気がする。
タコ公園で見た時だって…
全部左手でボールを扱っていた。
それも、バスケが上手いが故だと思っていた反面、なんだか違和感も感じていた。
そして…
あたしがレギュラーの話をする度、アイツはいつも遠くを見つめていた。
その表情を思い返すと、あたしの胸はひどく締め付けられた。
「仕方ないじゃん…。
知らなかったんだもん。」
あたしは自分自身に言い訳するように呟き、耳にはめていたイヤホンを外した。
どんどん重くなる自分の感情に、明るい音楽はそぐわない。
そして、あたしはまたタコ公園の前で足を止めた。
まだ薄明るい朝、あたしはジョギング用のスニーカーを履き、イヤホンを耳につけて玄関をでる。
「よかった。雨やんでる。」
あたしは空模様を確認して走り出す。
昨日はあまり眠れなかった。
"リョウの右腕はほとんど動かねぇんだ。"
"もう一生治ることはないらしい"
大地から聞いた言葉が心に渦巻く。
あたしは東亮太と出会った日からのことを、1つ1つ思い返していた。
屋上で初めて会った時、
ボールを拾ってと頼むあたしに、
アイツは手が空いてないと言った。
「……確かに…
左手はタバコ握ってたよね…」
あたしの足取りは重い。
思い返せば思い返すほど、
アイツはいつも右手をポケットに入れていた気がする。
タコ公園で見た時だって…
全部左手でボールを扱っていた。
それも、バスケが上手いが故だと思っていた反面、なんだか違和感も感じていた。
そして…
あたしがレギュラーの話をする度、アイツはいつも遠くを見つめていた。
その表情を思い返すと、あたしの胸はひどく締め付けられた。
「仕方ないじゃん…。
知らなかったんだもん。」
あたしは自分自身に言い訳するように呟き、耳にはめていたイヤホンを外した。
どんどん重くなる自分の感情に、明るい音楽はそぐわない。
そして、あたしはまたタコ公園の前で足を止めた。