左手のエース
左手だけのドリブル、

左右にフェイントをかけるような動き、


そして左手で軽くシュート…







東亮太が放ったボールは
ゴールを通過し、

そのままコロコロとあたしの足元まで来た。






彼は、
自分の練習を眺めているあたしの存在に気づいた。







「…何?」



じっと見つめるあたしに、リョウは静かに尋ねてきた。





彼の分の缶コーヒーを渡すことすら忘れ、胸の前で抱えこんだまま、あたしはキュッと唇を噛んだ。





この瞬間、目の奥から込み上げてくるなにかを感じた。





いつもと様子の違うあたしから、

彼はあたしの心情を悟ったかのように、

目を逸らして近くのベンチに腰掛けた。







少しの間沈黙が流れる。




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