左手のエース
「あんた、バレー部?」
彼は壁に寄り掛かったまましゃがみ込み、
タバコの煙を吐き終わると
こちらを見ずにそう言った。
「…うん。
あんたじゃなくて、
桜本舞。」
「こんなとこでサボってて
顧問に怒られねぇの?」
「見つかったらね。
……めったに、サボんないんだけどさ。
新人戦で、いいプレーができて、
即レギュラーに選ばれたんだ。
なんかね、放課後までじっとしてらんなくてさ。」
話してると勝手に顔がにやけてくる。
彼はまたふーっと煙を吐き出して、
冷たい視線で遠くを見つめていた。
「あなた、その上履きの色だから1年だよね。
名前何ていうの?」
あたしが空気を和ませるように
にこやかに話しかけると、
彼はタバコを指でピッと飛ばし、
立ち上がると足で火を揉み消した。
「……東亮太(ヒガシ リョウタ)。」
彼はそれだけ言って
背を向けて屋上を去って行ってしまった。
東亮太くんか…。
もう関わることもないかもな。
あたしはバレーボールを
右手人差し指の先で
クルクルと回しながら
静かにそう思ったんだ。
この出会いが
この先あたしにとって
大きな意味を持つことになるなんて
知るはずもなく…。
彼は壁に寄り掛かったまましゃがみ込み、
タバコの煙を吐き終わると
こちらを見ずにそう言った。
「…うん。
あんたじゃなくて、
桜本舞。」
「こんなとこでサボってて
顧問に怒られねぇの?」
「見つかったらね。
……めったに、サボんないんだけどさ。
新人戦で、いいプレーができて、
即レギュラーに選ばれたんだ。
なんかね、放課後までじっとしてらんなくてさ。」
話してると勝手に顔がにやけてくる。
彼はまたふーっと煙を吐き出して、
冷たい視線で遠くを見つめていた。
「あなた、その上履きの色だから1年だよね。
名前何ていうの?」
あたしが空気を和ませるように
にこやかに話しかけると、
彼はタバコを指でピッと飛ばし、
立ち上がると足で火を揉み消した。
「……東亮太(ヒガシ リョウタ)。」
彼はそれだけ言って
背を向けて屋上を去って行ってしまった。
東亮太くんか…。
もう関わることもないかもな。
あたしはバレーボールを
右手人差し指の先で
クルクルと回しながら
静かにそう思ったんだ。
この出会いが
この先あたしにとって
大きな意味を持つことになるなんて
知るはずもなく…。