左手のエース
「…同情?


泣かれても迷惑なんだけど。」



そう言って、怠そうに首を回す。









「泣いてないから。」





あたしは涙目になるのを
必死に押し殺そうとして
思わず言葉に詰まった。












「あっそ。じゃ俺帰るから」




彼はすぐに立ち上がって、

あたしの足元にあるボールに近づいて来る。








「…リョウ」





あたしは、込み上げてくる涙を必死に押さえながら、






ただ一言だけ、





「ヒドイこと言ってごめん」


と伝えた。


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