左手のエース
「…リョウは左手だけの練習でも
すごく上手いなって思ったの。
だから、また1から練習して、
左手だけでプレーできる選手を目指したらいいんじゃないか、って言ったんだ。」
うんうん、と亜耶は相槌をうつ。
「そしたら、
バスケにはある程度満足してた…って。
だから今更バスケに対してどうしようとも考えてないって。」
「ふーん…。
そーゆうものなのかな?
強がりにも聞こえるけど…」
「…うん」
話しているうちに、職員室の前に着いた。
…そういえば前はここでリョウに会ったんだっけ……
職員室の扉が開いて、
振り向いたら背が高いリョウがいたんだよね……
濃い茶色の髪に、
澄んだ瞳をしたリョウが思い浮かんだ。
あたしが…リョウに惚れる…?
さっき亜耶が言った言葉を思い出して、あたしは顔を振った。
あんな口が悪い奴、なんとも思わないし!!!
それより今はバレー以外のこと考えてる暇じゃないんだから!!!
そう思いながら、気持ちを引き締める…
試合まであと1週間を切っていた。