左手のエース
「あたしね。


親がエリート大卒の
かなり厳しい人でさ。
部活なんかするな、って考えの親で。


少しでも成績が下がると
部活を辞めろってうるさくってさ。



あたしはバレーがしたかったから
勉強だって全力だった。



試合前だろうが
部活に休みなんかなかろうが
いつも学年3番以内の成績をとって…


部活のほうだって必死でレギュラーになれたけど…



親はやっぱり、認めてくれなかった。

受験の邪魔だから早く辞めろって…顔を合わせる度に言われてね。」





早紀先輩の表情はやっぱり見えないけど、無理矢理笑顔をつくる様子が伝わってくる。







「そんな時にね、
担任から言われたんだ。



勉強もできるし、部活でもいい成績を残せれば、Y大に推薦出してやるって。



勉強ができるだけの人より、
部活でいい成績残してる人のほうが

何倍も有利らしくて。




Y大は親も認めてる、あたしの第一志望……

これ以上のチャンスはないと思った。


初めて親にギャフンって言わせられる…って。」






あたしはその話に息を飲んだ。

夏の試合には
早紀先輩のそんな思いがあったんだ――…



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