左手のエース
「舞!!」




教室の窓から
晴れ渡る空を見上げていたあたしは、


隣の席の亜耶(アヤ)の声で
ハッと我に返った。






「なに?亜耶」



「古典の課題やった?」



「……そんなのあったっけ?」



「あった。たしか今日締切だったと思うんだけど…。
今からやって間に合うかなぁ…。」




亜耶は、席が隣だったこともあって、
高校に入ってからすぐ仲良くなった。




おそらく何かの手違いで
進学クラスに紛れ込んでしまったあたしは、


部活一筋なこともあって、


今だに亜耶くらいしか
友達と呼べるクラスメイトはいない。







「それはマズイね。手分けしてやろうか!!」




あたしが古典の辞書を
ゴソゴソ探していると、

後ろから丸めた教科書で頭を殴られた。







「マズイのはお前の授業態度じゃないのか?桜本。」





振り返ると、
担任の徳ちゃんだった。






「授業態度?」



あ、今授業中だったんだ。


「ごめんね、徳ちゃん、静かにしときます!」





徳ちゃんははぁっとため息をついて話し始めた。
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