左手のエース

「ふふっ、あんた前から
よく見てたんだねぇ〜。
晶先輩のコト♪」



あたしは語尾にハートマークを付けて茶化してみせる。

大地は、必死に否定しながらも、
休憩終わるからと言って
練習に戻って行った。






レベルが上がった、か…。

自分達のレベルとかは
正直よくわからないけど

南高校に勝てるだけの実力は
正直、ある気がするんだよね…






体育座りして
膝の上に頭を寝かせた状態で
そんな思いを巡らせていると、

晶先輩が隣に座った。






「あ、先輩…!!
もう少し早く来てくれたら…

んもぅ、惜しいなぁ、大地。」



あたしが頭を上げて
ぶつぶつ言ってると、

晶先輩はあたしに
何の話?という顔をしてみせた。



「あ、いいんです。

先輩どうかしました!?」




「ううん、舞の調子、戻ってきてよかったなって思ってさ」




晶先輩の優しい笑顔に、
小さく胸が痛む。



あたしは晶先輩から
視線を逸らして、
言葉を選びながら話し始めた。



「………そのことで

今日、夜話そうと思ってたんですけど………」


ピー!!!!!!!!









あたしの話を遮るように、
休憩終了の合図が鳴った。


晶先輩は話の続きを促したけど、

あたしは「やっぱり、夜話しますね♪」と、笑顔を見せて立ち上がった。

< 58 / 67 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop