左手のエース
「数学課題出してない人いるー?

持って行くよーん♪」




あたしは集めた課題を抱えながら叫ぶと、

そのまま教室を出て職員室に向かった。



クラス40人分となると意外と重く、途中から指が痛くなった。






「だいたいっ、40人クラスで40人みんな課題忘れずやってくるとかっ…どれだけ真面目クラスなんだっつの!!」


ぶつぶつ文句を言いながら階段を下りる。





職員室の扉の前で、

課題で塞がった両手で
どうにか扉が開けれないものかと悩んでいると、




あたしの頭の上から
ひょいと腕が伸び、
その手が扉を開けた。




「あ、すみません、ありが…」




お礼を言おうと
振り返って見上げると、



そこには、屋上で会った
東亮太が立っていた。





「あっ、さっきの…」





彼はこちらを一度も見ずに
職員室へ入っていった。





タバコと香水の微かな匂いが残る。







やっぱりアイツ、
感じ悪いわ…。




そう思いながら徳ちゃんの元へ足を進めると、

彼も徳ちゃんに用事だったらしく、先に何やら話をしていた。
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