左手のエース
「…あたしは……」






悩んで悩んで
覚悟を決めたはずなのに…

晶先輩の期待を裏切っている
自分が恥ずかしかった。




「綺麗事だって
思ってくれていいです。


あたしは、人の夢を壊してまで
コートに立てません。

本当にすみません…」





あたしは頭を下げる。




頭を下げたままのあたしに、
早紀先輩は落ち着きを
取り戻した口調で言った。



「……あたしは待ってるから。

もし出る気になったら言ってよ。」




あたしは何も言えずに
頭をあげた。




「じゃ、戸締まりしとくから
舞は先帰って!!


明日からも部活は
ちゃんと来るんだぞっ♪」




晶先輩はおどけた表情で
笑っている。


本当にいい先輩に恵まれたな、
と感じながら
あたしは困ったように笑い返した。
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