左手のエース
-03-
カツ、カツ、……カツカツカツ…






徳ちゃんが黒板に
チョークを滑らせる音が
教室に響く






いつも通り、しんと静まり返る
この真面目クラスでは

正直、あたしには
深呼吸すらしづらい。






徳ちゃんは数式を解き始めると
いつも我を忘れて
つらつらと呪文のように数式を
書き進める…





普通ならこんな無言な授業、
教師としてどうなんだ!?
って思うとこだけど…


この真面目クラスでは通用するんだから笑えちゃう。




あたしはクラスの子達に
迷惑にならないように
静かにため息をつく。










こんなわけのわからない
数式が解けるんなら

あたしは本当は
どうすれば良かったのか、

いっそ数式にして解いてくれたらいいのに。




徳ちゃんの背中を眺めながら、
あたしはふと、そう思った。
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