左手のエース
晶先輩に試合に出ないことを告げてから、数日がたった。

試合は明日だ。




晶先輩からは何度か説得を受けたけど、
あたしの気持ちは
変わらなかった。









「…で、あるからして、
答えはこうなるな。

これはなかなか難しいなぁ、
先生も久々に心躍ったよ!」




徳ちゃんは我に返ったのか、
急に喋りだした。





心躍った…って…。



あたしは吹き出しそうになる
口元を頬杖をつく手で隠す。





目を輝かせながら
解いた数式を説明する
徳ちゃんを見ていると、


大好きな数学に
全力投球している様子が
伝わってきて、
羨ましさすら感じた。







徳ちゃんとは裏腹に。


つい1週間前まで
ひたすら待ち構えていた
部活の始まりのチャイムは、

最近はそれほど嬉しく
感じられなくなっていた。
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