水嫌いマーメイド

副キャプ就任

始まるのは良いんだけど…。

あたしの頭の中には舞と三越の、あのラブラブっぷりが離れなかった。

今度……彼氏持ちの先輩の舞に相談しようかな?もし、彼氏が出来たら目標はあの2人かなぁ…。

三越は“舞”って、呼んでるけど……舞は何て呼んでるんだろう……?

「妃泉!」

って、何で水沢が出てくんのよぉ!でも……そう…成れたら良いなぁってとは、思うけど…。
キャアーーー!!憧れるなぁ…。

物語のヒロインは、法律で決まってるかのように、ハッピーエンドで終わる。

でも、人魚姫のラストは自分の愛する王子様を生かして、自分は死んでしまった…悲恋系。

…イマイチ、人魚姫の気持ちが分からない…って思ってるあたしは子供なのかな?

『う゛ーん?』
「唸ってんじゃねぇぞ、佐々木!」

気が付けば、先生がすぐ右隣に居た。うわッ、知らない間に3ページも進んでるし!

『……すいまセン』
「最後の棒読みは何だ!」
『ごめんなサイ』
「ほぉ~?まだやるとは…罰としてホレ、訳してこい」

真っ白な新品のチョークをあたしに差し出しながら、教科書でくいっと黒板を指した。

『えぇ!?』
「えぇ!?じゃねーよ、やってこい」
『ふぁーい…』

渋々とチョークを受け取り、分かりもしない教科書を持って、黒板へと足を進めた。

ったく、分かんないの知ってて当てるなんて、それでも教師なワケ?(授業聞いてなかった、あたしも悪いけどさ!)

『誰コレ…よみ人しらず?』
「おぉ、佐々木の奴にしては良い歌選ぶじゃねぇか。分かるなら、それでも良いぞ」
『はぁ…?』

教科書の訳を無我夢中で早く席に着きたい一心で書き進めた。

「もー、良いぞ」
『どうも…』

脱力感にまみれ、席に戻った。先生は大きな咳払いを1つして説明を始めた。

「えっと、まずこの歌だが……」

あたしが訳した歌は、古今和歌集の“飛鳥川 淵は瀬になる世なりとも 思ひそめてむ 人は忘れじ”
っていう和歌。昔の言葉過ぎて、理解不能。思ひそめてむとか、忘れじって何?!

「えっと、…この和歌はざっくり説明をすれば、“飛鳥川の淵が瀬になるように、変わりやすい世の中だけど、私が愛してしまった人は忘れないだろう”……だ」

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