水嫌いマーメイド
…あたし1人で自惚れてるだけだよね。
「恋は+思考!」って可耶が言ってた名言あるけど、ムリだよ…。

思わせ振りでも良いから、期待させる言い方でも良いから、0.1%でも希望が有るような言葉が欲しいよ……!

『っ……』
「どうしたの?妃泉ちゃん?!」
『いや、目にゴミが…』「俺……付いて行きます」

ゴミが目に入ったは、とっさに出た嘘。あんたのせいなのに…なんで、張本人が付いて来んのよ!

しかも、ゴミが入った嘘なんかを信じちゃってるし!バカじゃない?!


…なんで……
なんで……。

『……んの…と…ょし…』
「ん?どうした?」
『何でもないから、ほっといて!!』

…ヤバッ…つい…。
水沢が近くに居るから、八つ当たりしてしまった。

「なんかあった?」

水の蛇口をひねってくれた水沢が、あたしの顔をのぞいた。

「もしかして……タイムが伸びないとか?」

タイムが伸びないって…そんなに水泳バカに見えちゃうの?!あたし!

最初は、水泳で青春を謳歌しに来たんだけど……水沢潤という、強敵が出来てしまったからな…。

まぁ、おまえせいで悩んでるとは一切感じないのだろうがね!

「あ、でも大丈夫!放課後、練習しね?」

出た……放課後。
あの時は、たまたま居たって事に気が付かないの?

「共犯…だろ?」

にっと笑った。
共犯って本当、ズルい。少しでも、1分でも居れるなら…。あたしを、必要としてくれるなら。

『良いよ…共犯しても』「やった!ありがとな佐々木」
『わ、分かったから!目洗わせてよ』
「わりぃ、わりぃ」


…あたしって、セコい。

“2人しか居ないから、水沢が困った時は、あたししか頼れない”……そう一瞬思ったんだもん。

『…計算高い女だなぁ…あたし…』

今度は本当に涙が溢れてきていた。

「佐々木…?」
『あ、何でも…ないっ』

……良かった。今度は、八つ当たりしなかった。逆に、あたしは落ち着いてきていた。

「おい、佐々木と水沢こっち来い」

かなり不機嫌な滝山が仁王立ちしていた。
大会の事…?それとも、クビ的なのがあったり?!

さっきのマイナスな考えは何処へやら。ぐるぐる変な考えが思考回路を横切る。

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