水嫌いマーメイド
『見つかって無いけど…手がかりなら』
「手がかり?何ソレ、探偵じゃん」
『気が付いたんだけど、コレ学年通信なんだよ』「あら、ほんと」

可耶も、文字の存在が無い事を確認して一息つくと、

「うん、分かった。帰ろうか妃泉?」
『何でそうなんのよ』
「だって…先輩も帰っちゃったし?変態が書いた手紙だったらどうすんのよ」

へ、変態かぁ…。

『それは……嫌だ』
「はい、決まり!さぁ良い子は帰りましょー」
『うん……』



「アハハハッ!」
『笑い事じゃ済まないからね?!』

約束通りに居る、夜の2人だけのプールに水沢の大爆笑の声が響く。
話の発端は、プールに着いてすぐに水沢が発した意味深な一言。

「なぁ?佐々木」
『ん、何?』
「先輩から、メアドの書いたメモ受け取らなかった?」
『メアド?受け取ったのは、真っ白で綺麗な紙だったけど?』

何で、あたしが先輩からメモを受け取ったのを知っているのか、その時は分からなかった。

「あーーー!やっちゃった…。わりぃ…それ俺だわ」
『えぇ?!水沢が差出人だったワケ?!』

そこで、あたしと可耶のやり取りを話すと、大爆笑して、お腹を抱えながら笑い続け、今に至る。
どうやら、差出人は変態という可耶の考え方にウケたらしい。

もし、本当に変態だったら教育委員会騒ぎにまで発展するだろう。

『でも、水沢で良かったよ…』
「嘘言え!絶対、変態が良かっただろ」
『んなワケないでしょ?!こっちの身にもなってよ』

ほんっと、ただ事じゃない。あたしの命にも関わる話かもしれないのに!


差出人が分かった以上、訊ねたい事がある。

『あ、のさ…メモに何て、書こうとしてたの?』


これが聞きたい。

一番聞きたい。


あたし宛の手紙なら
訊いても良いよね…?


「書こうとした…か。じゃあ逆に、何が書いてあってほしかった?」
『ほしかった……?』


…ほしかった物って、何だろう。

水沢潤のアド??


「どうした?」

それとも、水沢からの告白?

“好きです”って。
それとも……

……あれ?
改めて考えると、あたし自身、分からない。
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