水嫌いマーメイド
「ごめん……妃泉の話聞こうとしてたのに…」
『…こちらこそ良いものを見せて頂いて…』
「…………!!」
『ちょっとは、落ち着いた?』
時刻は、紅い夕焼けが綺麗に空に映える6時。
うん……と頷いてから視線をあたしに向けた。
『なに………?』
「妃泉が彼氏出来たら、私以上に恥ずかしい事聞き出してやるんだから!」
『舞の基準の恥ずかしいは、ハードル低すぎると思うよ……?』
“好きだよ”だけで、恥ずかしいのなら、手を繋いだとか、キスはとんでもなくハードルが高くなる。
「五月蝿いッ!」
やっぱり純情過ぎる舞は自転車を、ものすごい速さを出しながら帰って行った。
『あっ!!!!!舞から、どんな風に告白したのか、聞くの忘れたッ!』
夕焼けに映えない、あたしの叫び声。
時 既に遅し。
「もぉ、心配したんだからねッ!」
『あー、ごめんって』
「五月蝿いッ!今度絶対、おごらせてやるんだから!!」
『分かったってば』
ギャーギャーと可耶が叫ぶ。
心配してくれてる辺りは有り難いんだけど、うめき声だけはカンベン。
「でも、意外かも~!妃泉が腹イタで休むなんて」
『ま、まぁね……?』
「生理痛なら、分かるんだけど」
『あ、ハハ……?』
………流石に、腹イタって言い訳はキツかったかな…?痛いどころか超ぴんぴんだったんだけど。
「妃泉ちゃん!」
「大丈夫だった?!」
「もう平気なの?!」
「超、心配したんだから!!」
『あ……うん、大丈夫』
可耶に引き続いて、友達が心配してくれたんだけど……。質問攻めは、頭が痛くなった。
あたしが質問攻めに受けてた時ぽん、と肩を叩かれた。皆の動きが止まった。
………これは…水沢なのかッ!?
「オイ、部活始めンだから早くストレッチしてこい」
『はーい……』
声変わりの時期にしては、声が低すぎた……そう顧問の滝山だった。
顧問なら、顧問らしく登場してよ!!こっちが、勝手にときめく所だったわ!!
友達も、滝山の指示に従いストレッチを始めた。……仕方ない、やろっか。
「そうそう!妃泉が休みの間、水沢が心配してたよ?」