水嫌いマーメイド
「やっぱ最初は、“こんにちわ”でしょ?」
『分かってるよ!』
「で、“心配してくれてありがとう”」
『絵文字入れる?』
「笑ってる絵文字1つで良くない?」
あーだ、こーだ言い合って作成に取りかかるけど、帰り道だから、あっと言う間に家に着いてしまった。
メールも、あれこれ悩み過ぎで全然、文章が出来てないままで可耶と別れた。
打っては消して…を繰り返すケータイを片手にリビングのソファーに、凭れながら打ち始めた。
『夜だから、こんばんはで……』
独り言を呟きながらも、指を動かした。
【こんばんは。
この間は、そっけない態度とってごめんね】
……これじゃ“あたしが、謝ったからアンタも謝れ”って、言わせてるよねぇ…。
【こんばんは。
この間はごめん!そっけない態度とって…。水沢もそっけなかったね】
……相手の揚げ足取ろうとしてんのよ!
【こんばんは。】
……だけで良いかな?
でも流石に、挨拶だけじゃあ……。
もう一度、アドレス帳を開いて考えてみた。
“水沢潤”と表示された文字の下には、アドレスとケー番……。
『あ、そっかぁ♪』
世紀の大発見かも!?な程に、ひらめいた。
ケータイに電話すれば良いんだ!
『よ、よし……』
「妃泉~?勉強しなさいよ。さっきからケータイいじってばっかりよ」
リビングにずっと居たせいか、お母さんに見つかってしまった。
『あー、分かった!!』
怒り口調でリビングを出ていった。
近くにお母さんが居ちゃ、いつ電話の妨害されるか分からないし、知られたくないし。
リビングから出た、あたしには自分の部屋しか行き場がない。
『じゃ、改めて……』
「…おねーちゃーん?」
声を掛けてきたのは、中1で妹の妃菜子だった。
『な、何?妃菜子!』
「勉強教えて…」
『ちょっ、ちょっとだけ待っててくれる?』
「嫌!今が良いの!」
ひ、妃菜子のヤロォ……!今日に限って、しぶといのよ!
『用事があるから、後でね!絶対、教えるから』
「……絶対よ」
『うん、絶対だから』
お願いだから、早く出ていって!
あたしの人生の中で、(おそらく)一番大事な時だから!!