水嫌いマーメイド
「お前らは、敵情視察…と言った意味でベンチに入れ。…ライバル・目標が居れば新人戦は燃えるだろう?」
『はいっ、ありがとうございますっ!!!!!』

ヤバイ……超嬉しいんですけどーーー?!

「良かったねぇ!将来レギュラーって約束されたモンじゃない!」
『うんっ!』

思わず、可耶に抱きついた。でも、本心は…水沢と一緒でめっちゃ嬉しいーっ!……だ。

「……ありがとうございます」

おいおい、もうちょい素直に喜ぼう?せっかくのレギュラー候補(とは言ってナイ)なんだから!


「……さて、大会は2ヶ月後の7月だ。言って時間は無い。各自、モチベーションを上げておけ」


顧問がそう締めくくった言葉で思い返す。…2ヶ月後かぁ……遠いようであっという間の時間。

今はベンチだけど、自分の実力も上げてドーンッと昇格してやるんだから!ガッツポーズを天高らかに掲げる。

『可耶ぁ!一緒にかーえろっ♪』
「オッケ~☆」

帰る気のあたしに、何か恨みでも在るのかと思うぐらいのナイスタイミングで

「そうそう、佐々木。プール掃除忘れんじゃねぇぞ?」

顧問の鶴の一声。
あたしの気分をどん底まで突き落とすような一言。ハゲオヤジのアホぅ!折角、忘れてたのにィィーー!!


『と言うことで、ごめん……先帰ってて?』
「良いよ。掃除頑張ってね!じゃ、バイバイ」
『ん…バイバイ…』

はぁぁぁ……掃除嫌だぁ…何時に帰れるんだろ…。
すいません
泣いてもいいですか?




静かになった室内プールからは、水の音しか響かない。

『25Mって、広ッ!』

もちろん、静かだから同じ言葉が反響してくる。更に、独りが寂しく感じる。

『誰か…話し相手居ないかなぁ…?』

つい悲しすぎて、そんな独り言を呟いてしまった。外に目をやると他の部活はもう居ない。

あたし独りじゃん……。さっみしー……。

あれ…??
何か、目がうるうるしてきた……!ヤバッ…泣きそぉっ…?


「よぉ、掃除はかどってますかー?」

聞いた事のある…声。
まさか……!?
声のする場所に居たのは

『み……水沢ぁ!?』
「よっ!何してんの?」『見れば分かるでしょ?掃除!』


現れたのはショルダーを肩に掛けて私服で来た、水沢潤だった。

あぁ、そーいや言われてたね♪とわざとらしく答えた。知ってるなら、言うなっつーの!嫌味か!
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