水嫌いマーメイド
あたしが怒ってるのを構いもせず、ショルダーを物色し始める。なぁにしてんだか……。
先端が緑色のブラシでシャカシャカと広くて、深いプールを擦り始めた。


ちょっとプールが広すぎで、今やってる事が凄くムボーに思えてきた……。サボろうかな…?
悪魔に囁かれたかのように、あたしはプールから出ようとした。

「なぁ?お前、掃除やれって言われたんだろ?」『う、うん……。でも、1人じゃバカらしくなってきちゃって……』
「“1人”じゃねぇだろ?俺も手伝ってやるから……な?」

真っ直ぐ、強い瞳があたしをずっと見つめる。

『え…ごめん、ありがとう…』
「どーいたしまして☆素直で宜しい。んじゃ、俺は向こうやってくるわ!」


ぺたぺたっと裸足で駆けていく水沢。あいつが指した“向こう”は居た場所から一番遠い25M地点。そして、あたしは…スタート地点。

優しい通り越して、お人好しまで行きそうな心遣い。
あぁ…どうしよう…キュンッてきちゃったよ…。だから、モテるんだなぁ水沢って男は。




ザバザバ……と、荒々しい音を発しながらプールに勢い良く入って行く水達。
お、終わった…!
お疲れ様!あたしの筋肉、気力、体力!
そして……
たまには、掃除ってのも良いかも知れない!!と調子に乗った所で、掃除も終わったし、さぁかーえろっ♪

「ねぇ?ここの鍵は佐々木が持ってるの?」
『そうだけど……てか、何しに戻って来たワケ?』
「さァ…?ねぇ?佐々木。そのカッコで居るって事は、誘ってんの?」

誘ってる?ふと、自分の体に目をやると……
あ゛あ゛っ!
水着のまんまじゃない!


『誘ってない!断じて誘ってないから!!』
「ふぅん…?」

水沢が一歩、また一歩と近付くにつれてTシャツをゆっくり脱ぎだす。奴の上半身が露になる。
え、何だ?
この展開は!?ヤバイ、ヤバイめっちゃ顔が近い、近い、近い!!

あたしは、腰が抜けて全然動けない……!
ヤバッ…唇が…くっつきそうッッ!

「バカだろ?着替えて来れば?何?それとも…」

スッと唇をあたしの左の耳元まで持って来て…カッコよくて、甘い声で

「襲って欲しかった?」

と囁いた。


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