水嫌いマーメイド
ヤバイ…超ヤバイ。心臓止まりそう…。ドキドキ鳴りすぎで、今にも壊れてしまいそう……。声にしびれて、足がすくむ。


『べ、別に…襲わなくていいっ!』

そう、言い吐き捨てるのが精一杯で……一目散に更衣室に走って行った。


『あ゛あ゛……もう…びっくりしたよぉ…』
ドキドキしながら、ロッカーの中にあるタオルを取り出す。
平常心ってムズかしい。装うとすれば、する程ドキドキが止まらない…。


神様…仏様…マリア様…可耶……これが恋ってヤツなんでしょうか?
もし、これがそうならば、ドキドキし過ぎで告白する前に死んでしまいそうです……。

カッターシャツに手を通してボタンを留めていく時、ふと左耳に手が当たった。
「襲って欲しかった?」さっきは、襲われてないけど耳元で囁いた時点であたしは、襲われたと同等と思うんだけど……?

ハァァァ……。
大きなため息を出した時、プールから音が聞こえてきた。水沢?何して……



バシャバシャと音を出していたのは…やっぱり、クロールをしている水沢。あ……あたしに気が付いた。

「……バレちゃった?」『バレてるわよ』

まさか、ショルダーを掛けて学校に戻って来たのって……泳ぐ為に?それとも……

「ははっ……すげぇ顔」『ひどっ!』
「佐々木は泳がねぇの?」
『だって、完全下校時間過ぎたらダメでしょ?』


ほんとは…泳ぎたい。
だって、水泳が好きで入ったんだもん…ずーっと泳いでたい。

でも、完全下校時間を過ぎると部停になってしまうから……。たくさん泳ぎたいあたしに、下校時間は手強い天敵。

「俺なんか、ここ最近ずっと侵入してるけど?」
水沢のオマケの一言。
犯罪レベルじゃん!
それに、あんたとあたしは違うの!

『じゃ、あたし帰るから鍵頑張ってね?』
「はぁ!?俺が先公に怒られて来いって事か?!」

うんうん、と頭を縦に振った。
ついでに侵入してる事もバレちゃうんじゃなーい?

パンッと水しぶきと水沢が両手を合わせてあたしに、頭を下げた。

「なぁ!佐々木…俺と共犯にならね?」
『それって…内緒って事?』
「…そういう事かな」


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