鬼のお嬢
あたしは、火が迫り来る部屋の中で、幸人のことを考えると同時に、春のことを考えていた。
『おい!!!!!!!』
誰かの声が、きこえるような気がする。
『おい!!しっかりしろ↑』
顔をあげると、黒ぶちのメガネをかけ、黒いパーカーの帽子を目深に被った知らない若い男の人が立っていた。
『無茶ばかりするな!死んだら、どうする?この街は鬼のお嬢の街なんだろ?』
男はあたしの腕を、落ちていた木で固定し、持っていた包帯を巻いた。