ミルクティー
「手伝ってくれてありがとう。
みんなもう帰っていいから」


今日も私は戸締りをして帰る。
けど昨日と違うのは…

「控え室も行かなきゃ…」

「おっ!!七生さんいるかもよ」

「いないから。
もうからかわないでよ!!スズちゃん!!」

控え室も鍵をかけなくてはいけない。
海斗は『それじゃまた後で』って言ってくれたけど居ないよね…


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―――

「やっぱり来た」

「海斗!?」

「ここで待っていれば来るかなぁ~って思って」


さすが海斗。
待っていてくれたことが嬉しい。


「ここも一応掃除は少ししておいたから」

「あ、ありがとう」

「陸がさ、お菓子食べて…
雛那ちゃんの分もあるからね!」

「本当?
ありがとう」

「じゃぁ帰ろうか」


私達はゆっくり歩いて職員室へ向かう。
2人の間には会話は無い。
けど海斗と並んで歩ける事が嬉しい。
高校の廊下を歩ける事も。
海斗が高校生だったら一緒にこうやって歩けるんだなぁ~。






高校2年生の時の私は海斗の隣を歩ける事が幸せだった。
海斗の笑顔を見れる幸せ。
海斗の優しさに触れる幸せ。
カップに少しずつ溜まる
“ミルクティー”

そしてこれが海斗と過ごす最後の春だった―――――


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