ミルクティー
水曜日



教室の廊下のイスに座って待つ私とお母さん。
会話なんて無い。
誰も喋ろうとしない、喋る事がない。


「春野さんお入りください」


始まる。
仲の良い親子を演じる。
面談中はニコニコ笑って話をする私達親子。


「春野さんは勉強熱心でテストの点数も非常に安定しています」

「ありがとうございます」

「それに今年は高校代表として忙しい中でこれだけ点数をとれることは素晴らしいです」

「娘も頑張っていましたから」

「ではこれからも頑張ってください」




終わった。
仲の良い親子を演じ終わる。





私はお母さんと別々に帰る。
1人でゆっくり歩いていると遠くの方から声が聞こえる。


「雛那ちゃーん」


誰かが手を振っている。




海斗?





「雛那ちゃーん。
今帰り?」

海斗だ!
私は手を振り返す。

「ただいま、海斗」

「お帰り、雛那ちゃん。
今日はいつもより帰ってくるの早いね」

「うん、今週は三者面談だから帰りが早いの」

「今から家に寄っていく?」

「うん」


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