お姫様の憂鬱
「え? どうしたの!?」
あたしの涙に気づいた王子が驚いたという声でそういう
「なんでも、ない」
そういうけど
なんでもない訳じゃない
ただ、少し王子のことを考えて
もしかしたら・・・なんて思ってしまったから
過去を思い出したから・・・
「おいで」
え?
あたしの言葉に
普段より優しい声でそう言って王子は腕を広げた
意味が分からなくてキョトンとするあたしに
もう一回王子が
「おいでよ」
そう言ってあたしの腕をグイっと引っ張った
引っ張られた拍子に「きゃっ」って声が出たけど
そのすぐ後にはもう王子の膝の上だった
あたしの体は王子とは反対側に向いていて
そんなあたしの頭を撫でながら
王子は優しい声で
『大丈夫』とだけ言ってくれた