いつかきっと
亮の家を出て自転車をこぎながら、ケータイの時計を見る。

…もう6時か。

親もそろそろ帰ってくる頃かなー。

てか、香絵んち行かなきゃな…

何か気が重いっつーか、後ろめたいっつか…。

はぁ~と溜息を吐く。

なんと言って断るべきか。

風邪引いた…は無理だな。

俺今まで風邪なんて一度も引いたことないし。

しかも夏風邪って…ぜってー嘘ってばれる。

じゃあなんだ?

「ぅあ~~! わっかんねぇ!!」

ハンドルから両手を離し、頭を抱える。

そうこうしているうちに、家が見えてきた。

ん? 香絵の家の前に誰か…って! あれ香絵じゃん!!

香絵は買い物の帰りなのか、両手に買い物袋を提げている。

そして俺に気づき、手を振る代わりに名前を呼んだ。

「圭太!」

やっべぇ…いきなりすぎて余計テンパってきた…

どうする、どうするんだよ俺!!

香絵の前でキッと自転車を止める。

「や、やあ!」

って! なんだよその挨拶!!

「…どうしたの? 声裏返ってるよ?」

香絵が笑いながら言う。

いやいや、こっちにとっちゃ笑い事じゃないから!

「あの、なんだ…その~」

「もう、なに?」

どもる俺に、香絵が催促するように言った。

「えと、明日の夏祭り…」

「あぁ! そっか明日かぁ~楽しみだね!」

と、香絵は目を輝かせた。

いやいや、ちがうんだ。 そうじゃなくて!

「いやその、明日なんだけど…俺」

「明日どうしよう? やっぱり浴衣着ていくべきかな?」
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