いつかきっと
俺が部屋に入ると、寝転がって漫画を読んでいた中学生…もとい、香絵の弟の優(ゆう)が飛び起きた。

「圭太兄ちゃん!? 久しぶりじゃん!!」

そう言って俺に抱きついてきた。

こいつ、チビだけどこれでも中3だぜ?

まじでこの家のひとは人懐っこいっつーかフレンドリーっつーか。

下手すりゃ自分チより落ち着くかも。

「今日泊まってくの? 泊まってくよな! 泊まってけよ!!」

……何で命令形?

「あぁ、泊まってく。なんだぁ? そんなに嬉しいかチビ」

俺は優の綺麗にセットされた髪を乱しながらガシガシと撫でた。

こいつ、ホント綺麗な黒髪だよな~

「ちょっ…やめろよ圭太ぁ、これめっちゃ時間掛かってんだから!」

そう言いながらもこいつ、けっこう楽しそうだぞ?

優と二人で和気あいあいと戯れていると、着替えを終えた香絵が入ってきた。

「こら優! あんた受験生でしょ? 勉強しな!」

また漫画読んで……と母親のように叱りだした。

「ゲッ、姉ちゃん…今日はいいじゃん! せっかく圭太来てんだからさ」

「そうそう、そんな怒ってばっかだとシワ増えるぜ?」

俺の言葉に優は爆笑。そしてそれに便乗して言う。

「そうだそうだ! シワだらけのばばぁになっても知らねーぞ!」

ぎゃははは!! と香絵に指をさして笑う。

おいおい…それは言い過ぎ。こいつ怒らせっと――

「優…あんたねぇ……いい加減にしなよ……?」

あ、やべーぞこれ…

すると優も何かを察したようで、

「お、俺なんか無性に勉強したくなってきたかも! そんじゃ!!」

ズダダダー!

ガンッ!

いってぇー!!

……足ぶつけたな。

優……ご愁傷様。

「あれ? 急にどうしたんだろうね?」

こいつッ…自分の恐ろしさに気づいてねぇ。

天然か?

まぁそれはいいとして。
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