キミを想うトキ

あたしは防波堤に座ってそんな飴玉男を眺めてた




すごく



すごく静かで


波の音だけが耳に届く





目を閉じたら

まるで海に包まれてるような気分になった





しばらくして戻って来た飴玉男は
隣に座って口を開いた



「明後日、親父帰って来るって。」

「会食?」

「うん。」

「そっか…。」




ずっと延期になってた会食


なかなか時間が取れなくて
いつになるかわからないんだ。
そう飴玉男が話してた



「頑張れ、後継者♪」

「うん!桃ちゃんが選んでくれたネクタイで行くから♪」

笑って言ってくれたその言葉に
胸がつまった





それから
言葉を交わさないまま

あたし達はただ海を眺めてた





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