キミを想うトキ
「じゃ、そうゆう事で。」
歩き出した飴玉男の革靴の音
「待って!!」
裏庭に
橘さんの声が響いて飴玉男が足を止めたのがわかった
「お、沖村さんの事はどうするの……?」
ザァァ……
突然
強い風が吹きつけて枯葉が宙を舞った
少しだけ冷たくなった風が
もうすぐ訪れる秋を告げていた
「あんたが桃ちゃんに
勝てる訳ないでしょ?」
そう言った飴玉男は再び歩き出し
裏庭をあとにする
しばらくして
橘さんのすすり泣く声が聞こえて
あたしは千絵に腕を引かれながら
裏門へと歩き出す
薄暗くなった空に
鳥の群れが羽ばたいて
肌寒い風に
あたしは身を震わせた