キミを想うトキ
「……名前…。」
「ん~?」
ポツリと呟くあたしに飴玉男は顔を近づけて耳を傾ける
「……思い付かなくてごめん…ね。」
「うん。いーよ。」
静かな雨音が響き渡る
雨が少しずつ
着実にこの街に浸透してる
まるであたしの中に着実に
確実に存在してゆく
飴玉男みたいに
「…こう見えて……ちゃんと…考えたんだよ?」
「うん。知ってる。」
飴玉男はまるで子供をあやすみたいに優しく
静かにあたしに微笑みかける
「…何で知ってる…のよ…」
「桃ちゃんはぶっきらぼうで強がってばっかり居るけど、本当は優しいもん。」
その言葉に何も言えなくて
あたしは黙った
飴玉男も何も言わなかった
こんな風に素直に自分の気持ちを話したのは
雨に濡れて風邪をひいたんだ
きっとそう。
そのはず。
灰色の雲みたいな
あたしの心のモヤモヤを
雨のせいにして
暖かい飴玉男の上着に目をつむった