心の在り処
彼はわたしじゃないべつの女性を愛している。
わたしの時のように優しく髪を撫でて、わたしに言ったようにはにかんで「好き」と言ってわたしに触れたように体をなぞって愛して愛して愛して………
――にもかかわらずよ!
あの人の目に、体に、指先に、神経に、心に……細胞のすみずみまで恐怖を張り巡らせれるなんて……快感だわ!
このわたしがあの人を支配してるの!
歪?
いいじゃない。わたしはただ純粋にあの人が好き。大好き! 愛してる! ただそれだけよ。
わたしはね、少しあまのじゃくみたいで電話やメールって好きじゃないの。でもそんなんじゃ“彼”という存在が足りなくなっちゃうでしょう?
寂しかったの。
だから彼の行動をGPSで把握していたしコッソリ盗聴機を仕込んでみたりしちゃったわ。
そうしたらね、やっぱり一般的に「重い」という部類になっちゃって彼にひどいことを言われてフラれたわ。
だからといって、わたしは彼を憎まなかった。だって憎しみはぶつかるから嫌。憎しみじゃ彼を犯せない。だから彼に恐怖を与えることにしたの。わたしの存在がこびりついてはがれないように。
あの人が逃げて、わたしが追いかける。
素敵な一方通行の世界じゃない。