極道を愛した女
『幸恵元気にやってるかい。俺はお前を残して先にあの世へ行くけど、後に残したお前や娘の事が不憫でならない。
幸恵にはいつも苦労ばかりかけてすまなかったな。
これはせめてもの罪ほろぼしや。
お前が今も独身で俺の事を恨んでいなければ、この指輪を受け取って欲しい。
これは親友に頼んで特注で作って貰った指輪なんや。
もし、幸恵が現在結婚していたり、俺の事を恨んでいたら指輪と手紙は捨てくれ。
最後にもう一度言いたい。
俺は幸恵が本当に大好きやで。
俺は先にあの世へ行くけど、お前の幸せを心から祈ってるよ。
そして、幸恵がこちらに来ても一緒に暮らそうな…』
幸恵は慎吾の手紙を読み終えて、とめどなく涙を流した。
そして、慎吾の親友でアクセサリーデザイナーをしている男性が作ってくれたダイヤモンドの指輪を、左手の薬指にそっとはめるのであった。
幸恵は慎吾が亡くなってもずっと独身を通し、一日足りとも最愛の慎吾の事を忘れた日はなかった。
幸恵の携帯電話のメルアドは、慎吾と幸恵の名前を連ねたものだった。
(完)