凶漢−デスペラード
澤村が二本目の煙草に火を点け、漸く話しの続きをし始めた。
「お前の立場は俺の企業舎弟みたいな事になってるんだ……」
少し間を置いてから、それがさっきの話しの続きだと判った。
「うちの跡目争いの話しをしたが、実を言うとな、尚武会も同じなんだ…うちの方は、今の三代目が引退して、で、若頭の西尾さんが四代目を継ぐという道筋はしっかりと出来てるんだが、若頭の西尾さん自身は、健康上の理由で次の橋渡し役としてなら、会の為、跡目を継ぎますと言ったんだ。ここで普通に考えれば、西尾さんとこの若頭が直参に盃が直って、親栄会の頭になり、五代目候補になるってえのが、順当な話しなんだが、そうは簡単に話しは行かなくてな……旧百人会系…つまり、この渋谷を縄張としている俺の兄貴分が五代目レースのゲートに入っちまったんだ。いいか、話しがこれだけならそうややこしくならねえんだが、そこに尚武会の跡目争いが絡んじまったんだ。向こうはうち以上に複雑だから、それぞれ跡目を狙ってる奴が手土産欲しさで、それこそあちこちで他所の縄張を侵し始めてるんだ。この渋谷も実は、金田が上からの命令でここんとこあからさまに目立つような事をし始めた。ヤンのケツ持ちは、元を正すとうちなんだが、相手側の方は、金田がケツ持ちをしている…ここ迄説明すりゃあ、大体察しはつくと思うだが……こういう背景が重なり合って結果、今みたいな一触即発の状況になってるてえ訳なんだ。」
「中国人同士の揉め事が、実は西と東の代理戦争なんだ…て、事ですね。」
「ああ、しかも、始末が悪い事に、両方共跡目争いが絡み、レースに出場してる奴ら全員が、何らかの勲章を欲しがっているときている。いやがおうでも跳ねっ返りが出て来る……だがな、俺達にしてみりゃでっかいチャンスには違いないんだ。のし上がるチャンスが目の前にあるのに、ビビって腰引いたんじゃ、ヤクザの看板出してる意味がねえ…古森のオッサンを引っ張り出したのは俺だが、あの人の使い方を間違わなければ、最後の最後で効いて来る筈だ。手元に置いて損はねえ駒だよ。」
「大体話しの筋は判りました。いろいろ状況を見て、どういうやり方がいいか考えてみます。」
「ああ、そうしてくれ。金がかなり必要になるかも知れねえが、何時でも言って来い。お前の後ろには俺が付いてる。神崎…のし上がろうぜ。」
「お前の立場は俺の企業舎弟みたいな事になってるんだ……」
少し間を置いてから、それがさっきの話しの続きだと判った。
「うちの跡目争いの話しをしたが、実を言うとな、尚武会も同じなんだ…うちの方は、今の三代目が引退して、で、若頭の西尾さんが四代目を継ぐという道筋はしっかりと出来てるんだが、若頭の西尾さん自身は、健康上の理由で次の橋渡し役としてなら、会の為、跡目を継ぎますと言ったんだ。ここで普通に考えれば、西尾さんとこの若頭が直参に盃が直って、親栄会の頭になり、五代目候補になるってえのが、順当な話しなんだが、そうは簡単に話しは行かなくてな……旧百人会系…つまり、この渋谷を縄張としている俺の兄貴分が五代目レースのゲートに入っちまったんだ。いいか、話しがこれだけならそうややこしくならねえんだが、そこに尚武会の跡目争いが絡んじまったんだ。向こうはうち以上に複雑だから、それぞれ跡目を狙ってる奴が手土産欲しさで、それこそあちこちで他所の縄張を侵し始めてるんだ。この渋谷も実は、金田が上からの命令でここんとこあからさまに目立つような事をし始めた。ヤンのケツ持ちは、元を正すとうちなんだが、相手側の方は、金田がケツ持ちをしている…ここ迄説明すりゃあ、大体察しはつくと思うだが……こういう背景が重なり合って結果、今みたいな一触即発の状況になってるてえ訳なんだ。」
「中国人同士の揉め事が、実は西と東の代理戦争なんだ…て、事ですね。」
「ああ、しかも、始末が悪い事に、両方共跡目争いが絡み、レースに出場してる奴ら全員が、何らかの勲章を欲しがっているときている。いやがおうでも跳ねっ返りが出て来る……だがな、俺達にしてみりゃでっかいチャンスには違いないんだ。のし上がるチャンスが目の前にあるのに、ビビって腰引いたんじゃ、ヤクザの看板出してる意味がねえ…古森のオッサンを引っ張り出したのは俺だが、あの人の使い方を間違わなければ、最後の最後で効いて来る筈だ。手元に置いて損はねえ駒だよ。」
「大体話しの筋は判りました。いろいろ状況を見て、どういうやり方がいいか考えてみます。」
「ああ、そうしてくれ。金がかなり必要になるかも知れねえが、何時でも言って来い。お前の後ろには俺が付いてる。神崎…のし上がろうぜ。」