凶漢−デスペラード
二日後、道玄坂沿いに新たに二十人近くのポン引きが立ち始めた。

中国人娘達が路上に現れる迄は、新しいポン引き達は、一切声をかけず、元からいる連中の邪魔をしない。

中国人娘達が現れ始めると、一人一人がマークするかのようにして立ち、彼女達が通行人に声を掛ける前にアクションを起こす。

そして、次のポン引き達の所迄声を掛けながら付いて行き、次のポン引きにバトンタッチをする。

中国人娘達に声を掛けるタイミングを与えない。

更に、竜治はキャバクラのキャッチ達にも根回しをして置いたから、相手側はどうする事も出来ない。

初日から、小競り合いが起こった。

だが、ポン引き達は強気だった。

澤村からの指示もあって、何かあれば親栄会の若い者が一分とせず揉め事の現場にやって来る。

尚武会の人間もやっては来るが、中国人が間に入っている分、相手の方が腰が引けている。

一週間もすると、明らかに中国人達に焦りが出て来た。

客引きの娘達は、稼ぎが無いからと、別な街へどんどん移ってしまい、あっという間に路上に立つ数が三分の一になった。

相手側の中国エステ店にしても、客が入らないのだから、資金繰りに困り始めた。

ポン引き達は、中国エステに行きたがる客は、全てヤンの店に回したから、尚更閑古鳥が鳴く惨状になった。

竜治の目論み通りの展開になった。

しかし、尚武会側も、中国エステにこのまま撤退されては、せっかくの収入源が失くなってしまう。

彼等も黙って手を拱いてはいなかった。

中国人達の姿がすっかり見られなくなると、後から来たポン引き達は、引き上げて行った。

これで片が着いたとは、竜治も思っていない。

現実に、まだ店を開けている中国エステはある。

それに、マンション麻雀や、裏スロット、デートクラブも残っている。

次の標的を決めなければならない。

竜治は、ヤンと食事でもしながら、新たな対処法を相談しょうと思い、ヤンの店に向かった。

その日は、昼過ぎから降り出した雨で、肌寒い感じがした。

百軒店から、道玄坂小路に抜ける石段が、雨で滑り易くなっている。

顔見知りの風俗嬢が竜治の姿を見て頭を下げた。

竜治がそれに応えようとした時、小路の方から二人の男が来た。

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