凶漢−デスペラード
竜治の快気祝いをするからと言われ、南平台にあるその店に着いた時、それが指定された店だとはすぐに気付かなかった。
246を少し入っただけで、東京にもまだこんなに閑静な場所があるのかと思うような街並だ。
その中に溶け込むかのように建つ洒落た洋風の一軒家が、まさかレストランだとは誰も判らない。
そんな隠れ家のような店に招かれた。
完全貸し切り制の店だと後で知った。
二十畳程のダイニングルームが食事をする部屋で、二階が談話室となっている。
竜治が到着した時には、既に澤村やヤン、古森が来ていて、他に竜治の知らない顔が数人居た。
遅れた事の詫びを言うと、古森が、
「招いたのはこっちだから気にせんでいい。」
と、にこやかな表情で言った。
出された料理は、創作料理という事だったが、竜治には正直言って旨いかどうか判らなかった。
味が判る人間にはそれなりに旨いと思えるのだろうが、竜治にしてみれば比較出来るものが浮かばないから判断のしようが無い。
尤も、同席している顔触れの中で、落ち着いて食事出来る程、流石の竜治も無頓着では無い。
食事の前に、初めて見る男達を紹介されて、かなり緊張していたから致し方ない。
何故なら、目と鼻の先には、親栄会の次期会長を約束されている、現若頭の西尾を初め、執行部の主立った者が並んでいる。
その中には、澤村の兄貴分で、次の次を狙っている三神も居た。
食事が終わり、二階の談話室に移って、それぞれが食後酒を手にして寛いでいた。
ただ、澤村は体調が芳しくないからと言って、ミネラルウォーターを飲んでいた。
「今回は、大きな抗争にならずひと安心といったところですな。」
三神の言葉に、誰もが頷いた。
「尚武会にしても、東京に足場を作りたくて、荘のような中国マフィアを手先にしようとしたのだろうが、逆に裏目に出たというところですかな。」
「長い目で見れば、所詮ギャング団とこのまま手を組むのは自分達の利益にはならないと気付いたのでしょう。」
「まあ、西の者は何事もソロバン勘定で物事を決めますからな。」
それぞれが思い思いに今回の事を話していた。
澤村とヤン、竜治は終始黙って聞くだけだった。
246を少し入っただけで、東京にもまだこんなに閑静な場所があるのかと思うような街並だ。
その中に溶け込むかのように建つ洒落た洋風の一軒家が、まさかレストランだとは誰も判らない。
そんな隠れ家のような店に招かれた。
完全貸し切り制の店だと後で知った。
二十畳程のダイニングルームが食事をする部屋で、二階が談話室となっている。
竜治が到着した時には、既に澤村やヤン、古森が来ていて、他に竜治の知らない顔が数人居た。
遅れた事の詫びを言うと、古森が、
「招いたのはこっちだから気にせんでいい。」
と、にこやかな表情で言った。
出された料理は、創作料理という事だったが、竜治には正直言って旨いかどうか判らなかった。
味が判る人間にはそれなりに旨いと思えるのだろうが、竜治にしてみれば比較出来るものが浮かばないから判断のしようが無い。
尤も、同席している顔触れの中で、落ち着いて食事出来る程、流石の竜治も無頓着では無い。
食事の前に、初めて見る男達を紹介されて、かなり緊張していたから致し方ない。
何故なら、目と鼻の先には、親栄会の次期会長を約束されている、現若頭の西尾を初め、執行部の主立った者が並んでいる。
その中には、澤村の兄貴分で、次の次を狙っている三神も居た。
食事が終わり、二階の談話室に移って、それぞれが食後酒を手にして寛いでいた。
ただ、澤村は体調が芳しくないからと言って、ミネラルウォーターを飲んでいた。
「今回は、大きな抗争にならずひと安心といったところですな。」
三神の言葉に、誰もが頷いた。
「尚武会にしても、東京に足場を作りたくて、荘のような中国マフィアを手先にしようとしたのだろうが、逆に裏目に出たというところですかな。」
「長い目で見れば、所詮ギャング団とこのまま手を組むのは自分達の利益にはならないと気付いたのでしょう。」
「まあ、西の者は何事もソロバン勘定で物事を決めますからな。」
それぞれが思い思いに今回の事を話していた。
澤村とヤン、竜治は終始黙って聞くだけだった。