凶漢−デスペラード
「…実の息子の俺以上にこいつは悲しんでくれて……」
「義母さん、私の事、すごく優しくしてくれてたから……」
「親父はそれからすぐにムショであの世に行っちまいやがって…で、俺はそん時、こいつの父親になんなきゃって思ったんだ。でもな、まともな親になってやろうと思ってても、世間の眼何てもんは冷たくて…所詮、極道者の子ってえ眼でしか見てくんねえんだ。大学を出ても、まともな所じゃ使ってくれねえ…こいつも…久美子も学校じゃ俺以上に白い眼で見られてたと思う…まあ、結局の所、俺もこうしてヤクザ稼業に足を突っ込んじまったから、たいした事は言えねえんだけどな…とにかく、こいつには幸せになって貰いたいんだ。」
久美子が瞼に涙を溜めていた。
「澤村さん、だったら俺みたいな男じゃ相応しく無いでしょう。」
「相応しいかどうかは俺じゃなく、久美子が決める事だ。前に一度、ある男と結婚するだの駄目だのって大喧嘩してな…久美子、あれ何年前だっけ?」
「いいわよ、昔の事なんか…それより、急にどうしたのよ。」
「いいって事はねえさ…俺の気持ちの中じゃまだきちんとけりが着いて無い事なんだから…まあ、何年前だったかはどうでもいい話しで、こいつ、その男と駆け落ちしちまったんだ。三年…丸三年音沙汰無しだった…大晦日の日に、いきなりボロボロの姿になって戻ってきやがって…相手の男が悪いとか、こいつが悪いとか良いとかっていう話しじゃない。祝って貰わなきゃ駄目なんだ。二人だけがどんなに惚れただのへちまだのってのたくったって、周りから祝福されて見守って貰えてこそ、幸せになれるってもんさ。あん時、俺ももう少しこいつの気持ちを汲んでやって、見守ってやれるだけの気持ちがあれば、あんなにボロボロの姿になって戻って来る事は無かったんだ。神崎…久美子は多分お前に惚れてる筈だ。腹違いとはいえ、今じゃ俺にとって唯一の肉親だ。極道者の義妹じゃ不満かも知れねえが、こいつの気持ちを受け止めてやってくれねえか……」
全てを話し切ったという表情を澤村はしていた。
久美子の眼が、耳が、五感全てが、竜治の口から発する言葉を待っていた。
「義母さん、私の事、すごく優しくしてくれてたから……」
「親父はそれからすぐにムショであの世に行っちまいやがって…で、俺はそん時、こいつの父親になんなきゃって思ったんだ。でもな、まともな親になってやろうと思ってても、世間の眼何てもんは冷たくて…所詮、極道者の子ってえ眼でしか見てくんねえんだ。大学を出ても、まともな所じゃ使ってくれねえ…こいつも…久美子も学校じゃ俺以上に白い眼で見られてたと思う…まあ、結局の所、俺もこうしてヤクザ稼業に足を突っ込んじまったから、たいした事は言えねえんだけどな…とにかく、こいつには幸せになって貰いたいんだ。」
久美子が瞼に涙を溜めていた。
「澤村さん、だったら俺みたいな男じゃ相応しく無いでしょう。」
「相応しいかどうかは俺じゃなく、久美子が決める事だ。前に一度、ある男と結婚するだの駄目だのって大喧嘩してな…久美子、あれ何年前だっけ?」
「いいわよ、昔の事なんか…それより、急にどうしたのよ。」
「いいって事はねえさ…俺の気持ちの中じゃまだきちんとけりが着いて無い事なんだから…まあ、何年前だったかはどうでもいい話しで、こいつ、その男と駆け落ちしちまったんだ。三年…丸三年音沙汰無しだった…大晦日の日に、いきなりボロボロの姿になって戻ってきやがって…相手の男が悪いとか、こいつが悪いとか良いとかっていう話しじゃない。祝って貰わなきゃ駄目なんだ。二人だけがどんなに惚れただのへちまだのってのたくったって、周りから祝福されて見守って貰えてこそ、幸せになれるってもんさ。あん時、俺ももう少しこいつの気持ちを汲んでやって、見守ってやれるだけの気持ちがあれば、あんなにボロボロの姿になって戻って来る事は無かったんだ。神崎…久美子は多分お前に惚れてる筈だ。腹違いとはいえ、今じゃ俺にとって唯一の肉親だ。極道者の義妹じゃ不満かも知れねえが、こいつの気持ちを受け止めてやってくれねえか……」
全てを話し切ったという表情を澤村はしていた。
久美子の眼が、耳が、五感全てが、竜治の口から発する言葉を待っていた。