凶漢−デスペラード
竜治は澤村の眼を見つめたまま、ゆっくりと話し始めた。
それは、名前こそ出さなかったが、ジュリの事だった。
「…その女を愛してたとか、一緒になりたかったとか、そんなんじゃなかったんです…でも、そいつが死んで…しかも、自分で手首切って…重たいもん…背負っちまったんです…そのぉ、上手く言えないんすが、放り投げる事の出来ないもんを自分は背負っちまってるんです。久美子さんの事は…大切な人だと思ってます…生まれてこの方、ちゃんと女性を好きになった事が無いんで、自信はありませんが、自分の気持ちははっきりしてます……好きです…ですが、今、話したように…」
「待て、神崎。それ以上言うな。重たいもん背負ってんのはお前だけじゃねえぞ。」
澤村はそう言うと、久美子に向かって、
「久美子、お前、神崎が背負ってるもん、一緒に背負えるか?」
と聞いて来た。
久美子は涙を拭おうともせず、頷いた。
「神崎よ…背負ってんのはこいつだって一緒なんだぜ。俺も背負ってる…」
「はい…」
「先が…俺にはもう時間がねえんだ……」
澤村が、まるで悪戯を見つけられた子供のような照れ笑いを浮かべた。
どういう事なの、という表情で久美子が澤村を見つめている。
「末期ガンだとよ…」
まるで他人事のように澤村は言った。
久美子の顔色がどんどん青醒めて行った。
「病院の薬だけじゃ痛み、押さえられなくてな…生まれて初めて、シャブ使っちまったよ…医者はすぐに入院して手術しろって言ってんだが、どっちにしろ先が長くねえ事には変わりねえ…その事は、俺自身が一番判ってる…」
「義兄さん、どうして私に今迄黙ってたのよ。何で早く言ってくれなかったのよ。どうして……」
「澤村さん、ガンだからって皆が皆死ぬ訳じゃ無い。手術して、治った人だって沢山居るじゃないですか。勝手に自分で人生決めちゃいけないでしょう。もう一度、もう一度きちんと病院に行って手術して、そして治しましょう。ガンが何だってんだ、俺なんか目の前でチャカぶっ放されて、それでもこうして此処に居るんですよ。」
澤村は、笑みを浮かべたまま天井の方を眺めていた。
それは、名前こそ出さなかったが、ジュリの事だった。
「…その女を愛してたとか、一緒になりたかったとか、そんなんじゃなかったんです…でも、そいつが死んで…しかも、自分で手首切って…重たいもん…背負っちまったんです…そのぉ、上手く言えないんすが、放り投げる事の出来ないもんを自分は背負っちまってるんです。久美子さんの事は…大切な人だと思ってます…生まれてこの方、ちゃんと女性を好きになった事が無いんで、自信はありませんが、自分の気持ちははっきりしてます……好きです…ですが、今、話したように…」
「待て、神崎。それ以上言うな。重たいもん背負ってんのはお前だけじゃねえぞ。」
澤村はそう言うと、久美子に向かって、
「久美子、お前、神崎が背負ってるもん、一緒に背負えるか?」
と聞いて来た。
久美子は涙を拭おうともせず、頷いた。
「神崎よ…背負ってんのはこいつだって一緒なんだぜ。俺も背負ってる…」
「はい…」
「先が…俺にはもう時間がねえんだ……」
澤村が、まるで悪戯を見つけられた子供のような照れ笑いを浮かべた。
どういう事なの、という表情で久美子が澤村を見つめている。
「末期ガンだとよ…」
まるで他人事のように澤村は言った。
久美子の顔色がどんどん青醒めて行った。
「病院の薬だけじゃ痛み、押さえられなくてな…生まれて初めて、シャブ使っちまったよ…医者はすぐに入院して手術しろって言ってんだが、どっちにしろ先が長くねえ事には変わりねえ…その事は、俺自身が一番判ってる…」
「義兄さん、どうして私に今迄黙ってたのよ。何で早く言ってくれなかったのよ。どうして……」
「澤村さん、ガンだからって皆が皆死ぬ訳じゃ無い。手術して、治った人だって沢山居るじゃないですか。勝手に自分で人生決めちゃいけないでしょう。もう一度、もう一度きちんと病院に行って手術して、そして治しましょう。ガンが何だってんだ、俺なんか目の前でチャカぶっ放されて、それでもこうして此処に居るんですよ。」
澤村は、笑みを浮かべたまま天井の方を眺めていた。