凶漢−デスペラード
横浜からの帰り道、竜治はヤンが話していた事を何度も思い返し、この所の自分に対する親栄会の動きを振り返ってみた。
不穏な動きを感じるような兆しは見受けられなかった。
かと言って、ヤンの思い過ごしとも思えないきな臭さも感じていた。
そのきな臭い元は、全て河田から出ているような気がした。
冷血動物のような無表情な顔…他人に、絶対、喜怒哀楽を見せない、鉄のような感情…そして、触れる物全てを知らず知らずのうちに切ってしまうかのような鋭利さ…
澤村のような人間が、何故河田のような者を片腕として側に置いていたのであろう。
湧き出した疑問はとめど無く溢れ始めていた。
竜治と久美子の新居は、桜ヶ丘に借りた。
互いにそれ迄住んでいた所だと、澤村やジュリという死んだ人間の体温が、まだそこに残っていそうで、余りにも生々し過ぎたからだ。
横浜から桜ヶ丘の新居に戻ると、久美子がまだ引越しで片付いていない荷物を整理していた。
「店に行く時間じゃないのか?」
「ええ、少し遅れるからって電話したの。それより、貴方こそ意外と早かったのね。人と会って来るって言ってたから食事の用意とか何もしてないの。大丈夫?」
「ああ。食事はして来たから構わないよ。それより、ちょっと聞きたい事があるんだ……」
「何?」
「河田っていう男、知ってるよな?」
「ええ、勿論。義兄と良く一緒だったから。それがどうかしたの?」
「どんな男だった?」
「どんな男って、どういう意味で?」
「久美子の思ってるままでいいんだ。」
「そうねえ……正直言って、判らない人…かな。正体不明な所があるの。それと、時々ゾクッと寒気のするような眼差しで、じいっと見つめる事があって…どうして河田の事を?」
「いや、特別深い意味は無いんだ。河田は義兄さんの舎弟で、片腕として側に置いていた訳だろ?何と無く義兄さんと河田って結び付けずらいように思えてね。」
「言われて見ればそうね。前にね、こんな事があったの…まだ一度も会った事も無いのに、私に誕生プレゼントだと言って、花を贈って来たの。最初は花をプレゼントしてくれるなんて素敵だなって思ったんだけど、後で義兄に聞いてみたら、私の誕生日の事なんて一言も喋っていなかったのよ…」
不穏な動きを感じるような兆しは見受けられなかった。
かと言って、ヤンの思い過ごしとも思えないきな臭さも感じていた。
そのきな臭い元は、全て河田から出ているような気がした。
冷血動物のような無表情な顔…他人に、絶対、喜怒哀楽を見せない、鉄のような感情…そして、触れる物全てを知らず知らずのうちに切ってしまうかのような鋭利さ…
澤村のような人間が、何故河田のような者を片腕として側に置いていたのであろう。
湧き出した疑問はとめど無く溢れ始めていた。
竜治と久美子の新居は、桜ヶ丘に借りた。
互いにそれ迄住んでいた所だと、澤村やジュリという死んだ人間の体温が、まだそこに残っていそうで、余りにも生々し過ぎたからだ。
横浜から桜ヶ丘の新居に戻ると、久美子がまだ引越しで片付いていない荷物を整理していた。
「店に行く時間じゃないのか?」
「ええ、少し遅れるからって電話したの。それより、貴方こそ意外と早かったのね。人と会って来るって言ってたから食事の用意とか何もしてないの。大丈夫?」
「ああ。食事はして来たから構わないよ。それより、ちょっと聞きたい事があるんだ……」
「何?」
「河田っていう男、知ってるよな?」
「ええ、勿論。義兄と良く一緒だったから。それがどうかしたの?」
「どんな男だった?」
「どんな男って、どういう意味で?」
「久美子の思ってるままでいいんだ。」
「そうねえ……正直言って、判らない人…かな。正体不明な所があるの。それと、時々ゾクッと寒気のするような眼差しで、じいっと見つめる事があって…どうして河田の事を?」
「いや、特別深い意味は無いんだ。河田は義兄さんの舎弟で、片腕として側に置いていた訳だろ?何と無く義兄さんと河田って結び付けずらいように思えてね。」
「言われて見ればそうね。前にね、こんな事があったの…まだ一度も会った事も無いのに、私に誕生プレゼントだと言って、花を贈って来たの。最初は花をプレゼントしてくれるなんて素敵だなって思ったんだけど、後で義兄に聞いてみたら、私の誕生日の事なんて一言も喋っていなかったのよ…」