凶漢−デスペラード
「実は私、先月娑婆に出て来たばかりでして、浅井組と言いましても、立ち上げたばかりの小さな所帯でやっています…」
浅井は、簡単に自分の事を話し始めた。
死んだ澤村には、随分と可愛がって貰っていたと言い、葬式に出所が間に合わなかった事が一番悔やまれると彼は言った。
「残された唯一の家族である久美子さんが、神崎さんとご一緒になられているとお聞きしましたので、これは一度ご挨拶に伺わなければと思っていたんです。本当は、もっと早くお目にかかって、霊前にご挨拶をさせて貰いたかったのですが、出所後の挨拶回りやら、自分の組事務所を立ち上げたりとかで、今日迄延び延びになってしまいました。」
そう言って頭を下げる浅井の姿には、誠実さが溢れていた。
竜治は、是非一度マンションの方へ来て、澤村に焼香して下さいと言った。
「ありがとうございます。近いうち、必ずそうさせて頂きます。実は、今日はもう一つ大事な話しがあって伺ったのです。」
「どんなお話しですか?」
「神崎さんのお力を貸して欲しいんです。私は、今度この渋谷に事務所を出させて頂いたのですが、仕事の手始めとして、スカウト会社のケツ持ちと、店を何軒か預からせて頂く事になったんです。スカウト会社と言っても、これも立ち上げたばかりで、正直海のものとも山のものとも判りません。私自身がまだ刑務所ボケしていて右も左も判らない始末ですから、スカウトした女の子を捌くルートが今だ無い状態なんです。預かった店も、客が十人入るか入らないかというレベルのデートクラブと、胡散臭いハプニングバーにくたびれたポーカーゲーム屋です。どっちにしても、スカウト会社にこけられては、幾ら何でも立瀬がありません。そこで、何とか神崎さんにお力を拝借させて頂ければと…」
竜治より一回り近く年上であるのに、浅井はその事をおくびにも出さず、頭を下げた。
「良く判りました。私が以前やっていたデートクラブは、別な者に殆ど任せっきりにしてあるのですが、そちらに話しは通して起きます。」
浅井は何度も頭を下げた。
そして、竜治が今では渋谷の街一番の若手実業家だとまで言い出した時には流石に閉口した。
浅井は、簡単に自分の事を話し始めた。
死んだ澤村には、随分と可愛がって貰っていたと言い、葬式に出所が間に合わなかった事が一番悔やまれると彼は言った。
「残された唯一の家族である久美子さんが、神崎さんとご一緒になられているとお聞きしましたので、これは一度ご挨拶に伺わなければと思っていたんです。本当は、もっと早くお目にかかって、霊前にご挨拶をさせて貰いたかったのですが、出所後の挨拶回りやら、自分の組事務所を立ち上げたりとかで、今日迄延び延びになってしまいました。」
そう言って頭を下げる浅井の姿には、誠実さが溢れていた。
竜治は、是非一度マンションの方へ来て、澤村に焼香して下さいと言った。
「ありがとうございます。近いうち、必ずそうさせて頂きます。実は、今日はもう一つ大事な話しがあって伺ったのです。」
「どんなお話しですか?」
「神崎さんのお力を貸して欲しいんです。私は、今度この渋谷に事務所を出させて頂いたのですが、仕事の手始めとして、スカウト会社のケツ持ちと、店を何軒か預からせて頂く事になったんです。スカウト会社と言っても、これも立ち上げたばかりで、正直海のものとも山のものとも判りません。私自身がまだ刑務所ボケしていて右も左も判らない始末ですから、スカウトした女の子を捌くルートが今だ無い状態なんです。預かった店も、客が十人入るか入らないかというレベルのデートクラブと、胡散臭いハプニングバーにくたびれたポーカーゲーム屋です。どっちにしても、スカウト会社にこけられては、幾ら何でも立瀬がありません。そこで、何とか神崎さんにお力を拝借させて頂ければと…」
竜治より一回り近く年上であるのに、浅井はその事をおくびにも出さず、頭を下げた。
「良く判りました。私が以前やっていたデートクラブは、別な者に殆ど任せっきりにしてあるのですが、そちらに話しは通して起きます。」
浅井は何度も頭を下げた。
そして、竜治が今では渋谷の街一番の若手実業家だとまで言い出した時には流石に閉口した。