凶漢−デスペラード
浅井の視線が、竜治の眼を捕らえて離さない。
切羽詰まっているんだという事が、竜治にもひしひしと伝わって来る。
「実は、三代目も西尾さんも、正直、蒔田が五代目レースの頭になる事を面白く思っていません。ここだけの話しですが、本当ならば、澤村さんが五代目、というのが、当代と頭の意向だったんです。澤村さんの跡を継いだ河田の席は、本来ならば、今ムショに行っている滝本が座る筈でした。それを滝本がムショへ行って留守にしてる間に、何処をどう細工したのか判りませんが、蒔田の腰ぎんちゃくになったんです。神崎さん、今、渋谷の縄張で河田の所に上がってるカスリ、幾ら位だか判りますか?守代だけで月に二千万からの銭が入ってるんです。他にシャブでもかなりの荒稼ぎをしてる筈ですから、恐らく毎月三千万から四千万、いや下手をすると五千万位手にしていてもおかしく無いでしょう。これは、親栄会の中でも抜きん出た稼ぎです。この金が蒔田に流れてるんです。」
「ちょっと待って下さい。尚武会と組んだ中国人グループ達と揉めた時、澤村は自分の兄貴分である蒔田が跡目争いの渦中に入ってる事を良しとして、この俺に表に立てと言って後押ししたんです。今の話しを聞いていると、澤村と俺が取った行動が、かえって親栄会の為にならなかった事になる。暗にそう批難してるように聞こえるのですが?」
「誤解しないで下さい。澤村さんが生きていれば、この結果が親栄会にとっても大きな収穫だったんです。ですが、思ってもみなかった事が起きた。それは、澤村さんの死です。」
竜治は、この話しを自分なりに整理した。
蒔田、河田ラインというものが、親栄会の主流派に踊り出る事を好まない連中が多いという事なのだろう。
これ以上、力を付けて欲しく無いという訳だ。
この所、親栄会の様々な人間が自分にアプローチして来たのは、そういった意味もあったのかと竜治は納得した。
「浅井さん、一つ聞いていいですか?浅井さん御自身は誰を担ぎ出して親栄会をまとめるつもりなんですか?」
「親栄会をまとめるなんて力は自分にはありませんが、西尾さんの所の頭をやってる若杉ならば、と思ってます。ただ、まだ若過ぎて……」
切羽詰まっているんだという事が、竜治にもひしひしと伝わって来る。
「実は、三代目も西尾さんも、正直、蒔田が五代目レースの頭になる事を面白く思っていません。ここだけの話しですが、本当ならば、澤村さんが五代目、というのが、当代と頭の意向だったんです。澤村さんの跡を継いだ河田の席は、本来ならば、今ムショに行っている滝本が座る筈でした。それを滝本がムショへ行って留守にしてる間に、何処をどう細工したのか判りませんが、蒔田の腰ぎんちゃくになったんです。神崎さん、今、渋谷の縄張で河田の所に上がってるカスリ、幾ら位だか判りますか?守代だけで月に二千万からの銭が入ってるんです。他にシャブでもかなりの荒稼ぎをしてる筈ですから、恐らく毎月三千万から四千万、いや下手をすると五千万位手にしていてもおかしく無いでしょう。これは、親栄会の中でも抜きん出た稼ぎです。この金が蒔田に流れてるんです。」
「ちょっと待って下さい。尚武会と組んだ中国人グループ達と揉めた時、澤村は自分の兄貴分である蒔田が跡目争いの渦中に入ってる事を良しとして、この俺に表に立てと言って後押ししたんです。今の話しを聞いていると、澤村と俺が取った行動が、かえって親栄会の為にならなかった事になる。暗にそう批難してるように聞こえるのですが?」
「誤解しないで下さい。澤村さんが生きていれば、この結果が親栄会にとっても大きな収穫だったんです。ですが、思ってもみなかった事が起きた。それは、澤村さんの死です。」
竜治は、この話しを自分なりに整理した。
蒔田、河田ラインというものが、親栄会の主流派に踊り出る事を好まない連中が多いという事なのだろう。
これ以上、力を付けて欲しく無いという訳だ。
この所、親栄会の様々な人間が自分にアプローチして来たのは、そういった意味もあったのかと竜治は納得した。
「浅井さん、一つ聞いていいですか?浅井さん御自身は誰を担ぎ出して親栄会をまとめるつもりなんですか?」
「親栄会をまとめるなんて力は自分にはありませんが、西尾さんの所の頭をやってる若杉ならば、と思ってます。ただ、まだ若過ぎて……」