凶漢−デスペラード
パーテーションで区切られた応接スペースで、河田はソファにもたれていた。

その尊大な態度に、竜治は思わず顔をしかめてしまった。

横には、二人の若い男が立っていた。

金髪に染めた短いヘアスタイル、タンクトップから剥き出しになっている両腕には、タトゥーがこれみよがしに施されている。

シルバーアクセサリーをじゃらじゃらさせている二人の男と、高級スーツで身を固めた河田とは、余りにもギャップがあり過ぎて、そぐわないような雰囲気だった。

「いよ!随分と忙しいようだな…お陰で俺は此処で待ちぼうけ……」

竜治は事務員の女の子と佐伯に、今日はもういいからと言って帰した。

「今日は何か?」

「何かじゃねえよ、か、ん、ざ、き、さん…ケータイは繋がらねえし、こうしてわざわざ足を運んでやってもろくなもてなしじゃねえし、これじゃ付き合い方を考えなきゃな…」

「ちょっと商売の事で人と会っていたもので、ケータイの電源を切ってました…」

「お忙しい事で羨ましい限りだ。ついこの前迄はしがない売人だったのによ。せれはそれとして、忙しいあんたに頼まれたい事があるんだ。こいつらなんだけどな…」

河田はそう言って立っている二人の男を指差した。

「今度、エニグマでイベントをやる事になってな、あんたのとこで少しばかりチケットを捌いて欲しいだ。」

二人の金髪が竜治に頭を下げた。

その男達には目もくれず、竜治は河田に聞いた。

「どれ位捌けと?」

片手を広げた河田に、

「50枚ですか?」

と言うと、

「おい、おい、天下の神崎竜治にこの河田が頼みに来てんだぜ、一桁違うだろうが。500だ。」
「そりゃ無理でしょ。あそこの箱にどうやって500からの人間突っ込むんですか、一日二回のイベントにしたって、500じゃ多過ぎる。」

「こらぁっ!神崎、相手見て物を言えよ。俺がこうして頭下げて頼んでんだ。500って言ったら、じゃあ700下さいってえのが話しの筋ってもんじゃねえのか。余り俺を安く見てんじゃねえぞ。ついこの前迄はチンケな売人野郎のあんたが、こうして渋谷ででかい面してオマンマ喰ってられんのも、俺達のお陰だって事を忘れんじゃねえぞ!」

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